遺品整理のこれからの目標

生命圏ではありとあらゆるものが物質やエネルギーのやり取りをしており、そのことによって、「つながり」が生ずるのである。

便秘の苦しさを思い出そう「つながり」によってやり取りされる物質とエネルギーの道筋を追ってみよう。 環境とは、「あるシステム(体系)」を取りまくすべてである(ここで「あるシステム」とは、個々の生物や無生物であってもよいし、それらの集団でもよい)。
たとえば、「あるシステム」を「あなたの体」としてみよう。 するとあなたの環境とは、まわりの人間、動物、植物、空気、大地、川、太陽の光……というように、あなたを取りまくものの総体を意味する。
そこで、あなたと環境のつながりを考えてみる。 ただしこの場合、科学であつかうのは、あくまでも客観的なあなた、すなわち物質としてのあなたであって、恋愛関係とか上司との関係のような主観的なものではない。
あなたは、生きていくために、まず環境から食料(肉、野菜、水など)や空気(酸素)といった物質、さらに太陽光(冬であればストーブなど)から熱エネルギーを取りこむ。 あなたの体は、物質を加工して生きていくためのエネルギー(心臓などの内臓や体を動かすためのエネルギー)を生産する。
その結果、老廃物や熱が発生するが、それはかならず排出されなければならない。 もし老廃物の排泄が適切におこなわれないと、あなたは健康を害するかもしれない(排泄の重要さは、便秘の苦しさを体験した人ならすぐわかるだろう)。
熱エネルギーについても同じことがいえる。 熱エネルギーを取りこむだけでは、あなたの体温は下がる一方であるが、汗をかくことで熱を放出し、自分の体温を一定に保つことができる。
もしあなたの体のなかに水分が不足して汗が出なくなると、熱射病にかかってしまう。 ここで重要なことは、ある状態が正常である。
ここでは「あなたが健康であること」に対応するためには、取りこんだ物質とエネルギーは、何らかのかたちでかならず廃棄されなければならない、ということだ。 このように、環境とのあいだで物質やエネルギーを取り入れて廃棄することのできるシステムを、外に開かれたシステムという意味で「開放システム(系)」とよぶ。

生命圏のあらゆるシステムは開放システムである。 あらゆるシステムは「エンジン」である物質とエネルギーが滞留することなく正常に流れつづけている開放システムを「定常状態」とよぶ。
「持続可能な地球」とは、地球という開放システムとその環境(地球を取りまく宇宙)とのあいだでエネルギーの流れが正常に保たれていること、すなわち、地球が「定常状態」にあることを意味する。 あなたにとっての定常状態とは、あなたが毎日「快食、快眠、快便」の状態(健康)を維持することができる、ということだ。
開放システムの性質を、エンジンにたとえて考えると理解しやすい。 ガソリンエンジンのしくみを見てみよう。
ガソリンと空気を取り入れる。 燃料を燃やして圧縮した空気を膨張させる。
ピストンが動いて外に対して仕事をする(車を動かす)。 排熱と排気をしてもとの状態にもどる。
このように、定常開放システムは、物質・エネルギーの循環によって運動を規則的にくり返しつつ、常に初めの状態にもどる、という特徴をもつ。 あなたの体の場合は、睡眠によって疲労が解消し、朝になれば昨日の朝と同じ状態を保つことができる。

こうしてあなたは、毎日の規則的な生活のくり返しによって、健康が保証される。 産業活動は「定常的」か?動物も植物も、生物はすべてエンジンと同じ働きをする。
本物のエンジンには、いろいろ細かい工夫が施されているが、物質とエネルギーの流れに注目した、理想的なエンジンを、「環境エンジン」とよんで区別することにしよう。 工業による人間の産業活動は、石油などの燃料を使って動力を発生させ、廃物・廃熱をともなうから、エンジンと同じように、開放システムということができる。
そこで、「産業活動は定常的か」と、問いかけてみよう。 産業活動は多岐にわたっているが、火力発電(日本の電力供給の半分を占める)を例にとって、物質・エネルギーの流れを調べることにしよう。
火力発電では、化石燃料(天然ガス、石油、石炭)を燃やして熱エネルギーを発生させ、水蒸気をつくり蒸気タービンを回す。 その運動エネルギーは発電機に伝達され、電気エネルギーに変わる。
火力発電という開放システムへ取りこまれる物質は化石燃料と空気であり、廃棄されるのはさまざまなガスや水蒸気などの気体(物質)と、大量の熱エネルギーだ。 ちなみに火力発電の熱機関としての効率は35%程度であり、65%の熱は捨てられる。
その廃棄される熱エネルギーは、タンカーで毎年日本に運ばれる石油のおよそ半分の量に相当する。 たしかに、火力発電という開放システムは、いつまでも燃料が供給され排気ガスを無限に放出することができるかぎりでは、定常的であるということができる。
だが、最近では化石資源の枯渇とか温暖化ガスの蓄積など、環境破壊の問題が多く発生し、早晩、今日のような大量のエネルギー消費は行き詰まることが予想される。 物質(燃料)の取りこみと排気・排熱に制約が生じれば、そのシステムはもはや定常開放システムにはなりえない。
このように、問題にしているシステム(火力発電)だけに限定するのではなく、それを取りまく取りこんだ物質とエネルギーは大きな環境を考慮してゆくと、そこに潜んでいる障害を発見することができる。 つまり、火力発電を包みこんだ地球という、より大きな開放システムを考えれば、環境破壊によって、地球システムがもとの状態に復帰しえないことがわかるのである。
ここで、システムの定常性を、資源と廃棄物の観点から見ることにしよう。 上で見たように、火力発電にとっての資源は化石燃料であり廃棄物は熱とガス。
一方、生命システムを代表して植物を考えると、その資源は、根から吸い上げるリン、窒素、カリなどの無機物と水、そして空気中から吸収する炭酸ガス。 植物はその成長過程において、太陽光の助けを借りて炭酸ガスと水からブドウ糖をつくり、酸素と水を排出する(光合成)。

秋になれば葉も落とす。 つまり、植物の廃棄物は、酸素、水、落ち葉ということになる。
このような廃棄物のうち、酸素は動物の資源になり、水はしずくとなって土壌に帰ったり、水蒸気として上昇し、雨になって地球にもどってくる。 落ち葉は、虫にとっては大切な資源だ。
虫の排泄物や死骸をさらに資源にする小さな虫もいる。 それらもまた、最後には菌類の資源になり、無機物に分解されるが、それはふたたび植物の栄養分になる。
植物のような生命システムでは、〈資源→廃棄物→資源……〉という物質循環の輪はとぎれることがないのだ。 言葉をかえれば、定常開放システムにはまったく無駄がない、ということになる。
では先はどの産業システムはどうか。 資源としての燃料は、燃やしてしまえばガスになり、決して再び資源にもどることはない。
つまり、物質は循環しえないのである。 人工物質を生産するエンジンは循環できない植物の場合、循環するのは「自然物質」。

それに対して産業システムで発生する廃棄物(この場合はガス)には、もともと自然界に存在しない「人工物質」がふくまれている。

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